コモンマーモセットにおける健康指標としての血中必須微量元素濃度の有効性の検討

抄録

京都大学霊長類研究所内で飼育されている108頭の健常コモンマーモセットの血中亜鉛濃度を測定し、1)血中亜鉛濃度の基準値、2)血中亜鉛濃度のバイオマーカーとしての有用性を検討した。血中亜鉛濃度の基準範囲は24.4〜81.4 μg/dl(全個体、雄雌年齢区別なし)であった。Wasting Marmoset Syndrome(WMS)と診断された個体(個体番号Cj568)の血中亜鉛濃度は19.2 μg/dlであり基準範囲を下回っていた。また、血中亜鉛濃度は血中アルブミン濃度と正の相関を示した。これらの結果から、健康状態のバイオマーカーとして血中亜鉛濃度の有効性が示唆された。

血中の亜鉛濃度が健康のバロメーターになる可能性についての論文です

亜鉛は健康維持に不可欠な必須微量元素です

亜鉛は多くの生理機能に関与します

  1. 皮膚と被毛の健康
    • 亜鉛は皮膚細胞のターンオーバーを助け、皮膚のバリア機能を維持します。
    • 被毛の成長にも関与し、欠乏すると脱毛や乾燥、鱗屑(フケ)などが見られます。
    • 特に犬では「亜鉛反応性皮膚炎(Zinc-responsive dermatosis)」という疾患が知られています
    (例:シベリアンハスキーやマラミュートなどの北方犬種)
  2.  免疫機能の維持
    • 亜鉛は白血球の働きをサポートし、感染への抵抗力を高めます。
    • 欠乏すると免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなることがあります。
  3. 細胞分裂と成長
    • 子犬や子猫など成長期の動物にとって、亜鉛は細胞の新生や発達に重要です。
    • 欠乏すると成長遅延や体重増加の停滞が起こることがあります。
  4. 酵素の活性化
    • 300種以上の酵素の構成成分または補因子として働きます。
    • 酸化ストレスの軽減やDNA合成など、生命活動に直結する反応に関与しています。
  5. 繁殖と生殖機能
    • 精子形成や卵巣機能にも影響し、繁殖に関わるホルモンの調整にも関与しています。

    【亜鉛欠乏の主な原因】

    • 不適切な手作り食(特にカルシウムが多すぎる場合、吸収が阻害される)
    • 吸収不良(腸疾患など)
    • 特定の犬種(遺伝的に吸収能力が低い場合あり)

    手作りご飯や栄養の過不足が心配な方はご相談くださいね!